もう少し考える。

『少年Ａ』から自分が遠い人間なら、裁かれ決められた刑を終えた、つまり罪を償った彼に対してどうこう言うのは、やっぱり間違ってると思う。
実際は何も分かってないんだからね。
でも、償い終えてやり直し始めた彼が身近な人ならどうなのか？
僕が知ってる彼はいいヤツ。友達だ。
でもある日彼が、昔新聞を賑わせた『あの大事件』の犯人だと知る。
何も変わらずにいられるか？
それは無理だ。
過去は過去、僕の知ってる彼はそんな人間じゃないと割り切るのは難しい。
以前に恐ろしい事件を起こした人間が近くにいると分かったら、不安だろう。ごく当たり前の心情だと思う。
自分が知ってる彼からも、そういえばあの時様子がおかしかったとか、知らない彼を抽出しようとさえするかもしれない。
今、自分が知ってる彼はすごくいいヤツ、友達だということが何もかもまやかしに思えるかもしれない。
ちゃんと、今の彼を知ってる筈なのに。
まぁ人間丸ごと全部理解することなんて出来ないから、そこから恐怖はやって来るのかもしれない。
今、自分が見ているものこそが真実だと信じられたら、悩み抜いたその先に彼を受け入れられる境地が待ってるのかもしれない。
彼が抱える悲しみや辛さや孤独感が分かってあげられたら。
それにはきっとすごく時間がかかる。
それまでに外側から、無傷でいるクセに、騒ぎ立てるヤツらに邪魔させないことだ。
今はそれが難し過ぎる。